電子教科書をふくむ教材デザインに必須のベクトルとバランス
Appleが「教育に関する発表」を行う前日の2012年1月17日、コンセントが所属するAZグループが理事を務めるDiTT(デジタル教科書教材協議会)の勉強会にて、「学びやすさとデザインの関係」と題して、学びを促す、奮起させる、スムーズに吸収するためのデザイン指標についての研究過程を発表しました。
デジタル教科書においては、反復性の高い練習問題などに関して有効なツールがすでに多く研究、発表されています。
ところが、その有用性だけに目を向けていると、教科によっては問題が生じることが予想されます。それは、デザインベクトルが間違ったままの議論で最適なデザインポリシーが確立できないという問題です。そこで、デザインベクトルとステイタスという考え方で、検討、議論をすればコンセンサスがとれると予想されます。
学びのデザインのベクトルとして、わかりやすく、「機能のデザイン」「文脈のデザイン」の2つがあると考えられます。
下図のマトリクスのように、デザインの長所を理解して、教科、学び方に合わせて、ベクトルバランスという考え方で、デザインについて議論することが重要です。
電子教科書は機能のデザインに傾倒しがちだし、紙の教科書は機能のデザインが苦手。
そんななか学習参考書などは、効果検証とフィードバックのサイクルが明確なため、機能のデザインと、文脈のデザインのバランスを「経験則的」に取り込めています。

この2つのベクトルを使い実際の原稿参考書を分類してみました。その中で、「モチベーション」という指標も浮かび上がってきました。それは、まず学びはじめるための敷居が設定されている点です。特に数学や物理などは顕著で「取っつきやすくする」「さらなる探求を求める」といった二極化が起きていて、これは、パッケージングのデザインに大きく影響する指標です。

Appleの発表した、iBooks Authorは文脈のデザインが重視された、レイアウトソフトで、その中に、ドリルや動画などのインタラクティブが、インサートできるツールのようです。
デザインベクトルのバランスは、このソフトウエアでも重要かも知れません。
執筆:伝わるしくみ開発室室長 川崎紀弘
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