IA Summit 2014 Redux in Tokyo イベントレポート
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- コミュニケーションデザイン
エンタープライズ情報アーキテクチャー(EIA)チームの山中です。
5月13日(火)に「IA Summit 2014 Redux in Tokyo」(IAサミット報告会)を開催しましたので、その内容をご紹介します。
今年のIA Summitには、日本からコンセントのほか、株式会社リクルートライフスタイルの方も参加されたため、より突っ込んだ議論ができるよう、今回の報告会はその2社での合同開催とし、両社社員と関係者を中心としたややクローズドなスタイルの会となりました。
場所はリクルート本社セミナールーム。飲み物、食べ物を持ち寄ってリラックスした雰囲気での開催になりました。難しい話はお酒を飲みながら聞くのが丁度良いので助かります。
さて、冒頭の挨拶はコンセントの長谷川から。
今年でIA Summitの開催は15回目になるそうです。毎回北米で場所を変えながら開催されているIA Summitは、今年はカリフォルニア州サンディエゴにて、2014年3月26日〜30日の5日間にわたり開催されました。西海岸に位置するサンディエゴは温暖な気候で、市内にはパンダもいる有名な動物園があるとのこと。過ごしやすくいい場所みたいですね。
IA Summitは、前半の2日間がワークショップ、後半の3日間がカンファレンスという構成でカンファレンス期間中は基調講演、3トラックのパラレルセッションやフレックストラックが行われた模様。
その他にもヨガやカラオケナイト、ゲームナイトなどのレクレーション的なイベントもたくさんあったそうです。セッションだけだと息が詰まるので、こういうのは大事ですよね。
今年の参加人数は500人ほどで、北米からが6〜7割程度、残りがヨーロッパからの参加のようです。日本からはリクルートライフスタイル社、コンセント社から4名、その他数名が参加し、ほかにも現地に駐在している数名の日本人の方もいらしたとのこと。
さて、そのなかで今回は個人的に興味があった基調講演部分をメインで紹介します。
IA Summit最初のプログラムである基調講演は、Netscape、Yahoo!、Googleのデザイン・UXの責任者を歴任し、現在はヨガインストラクターをしているという変わった経歴の持ち主であるIrene Au氏によるもの。朝から参加者全員で椅子の上でできるヨガのポーズを取ったりしながら…と、変わった内容だったようです。
講演内容はというと、キャリアパスに関する話で、主に3つのポイントで話されたということ。
1点目は「“ブリッジビルダー”として職能が異なる人との関係性を良好に保つこと。そして様々な人と繋がることを文化として自分のなかで浸透させること。」
要するに、「自分の範囲や殻に閉じこもって仕事をしていても、しょうがないですよね。」(と理解しました)ということらしい。
まあ、でも日本では当然のように求められる能力だとは思うので、さほど驚きはないですが、むしろアメリカなどは専門性を重要視しそうなので、意外だなーという印象。
2点目は「足元を見ていまある現状をただ良くしようとするのではなく、俯瞰して観察し、未来をつくるように心掛けること。」
これは言葉にするのは簡単ですが、実行するのと、その視点を持てるのが難しいと個人的に思います。僕はこれが大事と気づくのに、働き始めてから5年ぐらいかかりました。
3点目は「常に初心に戻り、すべてが新しいと認識すること。初心に戻ることで、私はこれだけやった、という見栄やゴールを設定することなく、常に前進することができる。」
これも僕はキャリアを積んで気付いたのですが、働き続けるというなかで非常に大事なことだと個人的に思っていることです。同じ仕事をしていても、常に新しい目で見ることは大事だなと常々思います。まあ、これも実行は難しいですけどね。
上記をまとめた締めの内容は、なんとなく達観し過ぎで浮世離れしていて、「ああ、ヨガの世界」という感じがしましたが、全般的にとても共感できる内容でした。思うに、アメリカでもこのITの世界では、狭い領域での専門性(スペシャリスト)ではなく、ある程度の専門性を持ったジェネラリストが求められているのではないか?と感じた内容でした。
スケールは違いすぎますが、デザイナーからキャリアをスタートしさまざまな経験をしてきた自分にとっては、とても親近感が湧く内容でした。
個人的には「その3つのレッスンの内容、働き始めた最初からわかっていたんですか?今になって気づいたんですか?」というのがすごく気になるのと、「なんで、今、ヨガインストラクターやっているの?」というツッコミを誰もしないみたいなので、僕もスルーします。
IA Summit最終日の最後のセッション「Closing Plenary」は、IAコミュニティではお馴染みのPeter Morville氏によるもの。彼は15年連続でIA Summitに参加しているとのこと。皆勤賞ですね。スゴイ。
Closing Plenaryは若干概念的かつコミュニティを自省するような内容なので、詳しくは省いちゃいます(!)が、印象的だったのは「我々は情報を設計するのは得意だけど、自分自身を設計するのは苦手だよね。」というような内容があったということで、先ほどのキャリアパスの話にもつながっていて興味深いと感じました。
続いて簡単に個別のパラレルセッションの内容紹介。
今年は3本のパラレルセッション+フレックストラックの構成で行われたそうです。
3つのパラレルセッションの内訳は、トラックAが実例などの実践的なHow-toで、トラックBがフレームワークなどの概念的な内容、トラックCが組織やチーム編成的な内容、というラインでの分類。
個人的にはB及びCに興味がありますが、まずはトラックA。
いろいろ紹介の話をききましたが、特に目新しくはなく、「そりゃそうだ、がんばろう」的な感じなので、割愛します。(内容を紹介してくれた方、スイマセン)
その流れでポスターセッションでコンセントが発表してきたものについても紹介。
モバイルUI設計プロトタイプツール「Handmock(ハンモック)」というのがそれ。Handmockはモバイル用のペーパープロトタイピングができるツールで、独特な形状の付箋紙や付属品で構成されているものですが、ポスター発表を見に来た多くの人は、そのツールの一部である3Dプリンターで作成したスマホ筐体モックにも興味をもったようです…。
コンセントのHandmockに関するポスター
コンセントラボ|Handmock(旧名: CHIKUWA)に関する記事
続いてトラックBの話。
個人的に今回のセッションメニューでも興味のあったLOD(Linked Open Data)の話とウェアラブルデバイスの話がこのトラック。
まずは、LODの話。
BBCで行われた音楽情報の配信に関するLOD活用事例的な話。
組織的な取り組みの話なのかなーと思いましたが、結論からいうと、会社で取り組んだというよりも、個人の頑張りで実現しました的な内容で、BBCが積極的にLODに取り組んでいる…とは言えないのかなと思い、少し残念。そして、やっぱりわかりにくいね、LODって感じです。
続いて「Responsive Information Architectures」という内容の話。
タイトルが流行り言葉を意識している風で気になりますが、昨年のIA Summitで提示されたIAモデルを拡張した話のようです。Ontology(オントロジー)から、どのようにQualia(クオリア)が形成されるのかというのは、興味深いですね。
ウェアラブルデバイスの話は、「情報」「デバイス」「人」という3つの関係性とかの話を期待していたのですが、ウェアラブルデバイスを扱う上でのデザインルールの話でした。主に4つのルールが提示されたようです。
最後にトラックCの話。
教育の話、クライアントとの付き合い方の話などプロジェクト実行時にリアルにぶつかる壁の乗り越え方や注意点の話でしたが、日本という文化を加味すると「どうなのか」という内容も多い印象。
その中で徒弟制度の話が興味深かったので軽く触れます。
「UXデザイナー不足を解消するための実際的なApprenticeship(徒弟制度)の紹介」ということで、徒弟制度のアーキテクチャに触れています。「1人あたり13人のメンターをつけ、12週間で25のメソッドを教え、252時間のフェイス・トゥ・フェイスのメンターシップを実施」などちゃんと数値化しているのがいいですね。「Apprenticeship」ということで、「Internship」との違いや「Mentorship」との関係性などから、徒弟制度の重要性を説明する内容。
徒弟制度そのものは、日本にも文化があったはずなのに、最近の日本企業では失われつつあるものを、海外では数値化して見なおしているところがとても興味深いです。
個人的にも昨今のWebの業界で、経験不足のデザイナーやIA、PMが多いのは、この徒弟制度的なものが失われつつあるからなのでは?と思っています。
そんなこんなで、お酒もいい感じですすんで酔いがまわってきたのもあり、最後の方はよく覚えていないので、詳しく知りたい方は基調講演を含め、ほぼすべてのスライドがMedium上で公開されていますので、そちらをご覧いただければと思います。
最後に、来年のIASummit 2015は、アメリカのミネアポリスで2015年4月22日〜26日に開催されるそうです。コンセントからも例年通り参加する予定ですが、開催日がいつもと違って日本の期末ではないので、日本からも行きやすいですね!!これは地味に嬉しい。
参加を考えている方は下記の最新情報をチェックしてください。
5月13日(火)に「IA Summit 2014 Redux in Tokyo」(IAサミット報告会)を開催しましたので、その内容をご紹介します。
今年のIA Summitには、日本からコンセントのほか、株式会社リクルートライフスタイルの方も参加されたため、より突っ込んだ議論ができるよう、今回の報告会はその2社での合同開催とし、両社社員と関係者を中心としたややクローズドなスタイルの会となりました。
場所はリクルート本社セミナールーム。飲み物、食べ物を持ち寄ってリラックスした雰囲気での開催になりました。難しい話はお酒を飲みながら聞くのが丁度良いので助かります。
さて、冒頭の挨拶はコンセントの長谷川から。

今年でIA Summitの開催は15回目になるそうです。毎回北米で場所を変えながら開催されているIA Summitは、今年はカリフォルニア州サンディエゴにて、2014年3月26日〜30日の5日間にわたり開催されました。西海岸に位置するサンディエゴは温暖な気候で、市内にはパンダもいる有名な動物園があるとのこと。過ごしやすくいい場所みたいですね。
IA Summitは、前半の2日間がワークショップ、後半の3日間がカンファレンスという構成でカンファレンス期間中は基調講演、3トラックのパラレルセッションやフレックストラックが行われた模様。
その他にもヨガやカラオケナイト、ゲームナイトなどのレクレーション的なイベントもたくさんあったそうです。セッションだけだと息が詰まるので、こういうのは大事ですよね。
今年の参加人数は500人ほどで、北米からが6〜7割程度、残りがヨーロッパからの参加のようです。日本からはリクルートライフスタイル社、コンセント社から4名、その他数名が参加し、ほかにも現地に駐在している数名の日本人の方もいらしたとのこと。
さて、そのなかで今回は個人的に興味があった基調講演部分をメインで紹介します。
IA Summit最初のプログラムである基調講演は、Netscape、Yahoo!、Googleのデザイン・UXの責任者を歴任し、現在はヨガインストラクターをしているという変わった経歴の持ち主であるIrene Au氏によるもの。朝から参加者全員で椅子の上でできるヨガのポーズを取ったりしながら…と、変わった内容だったようです。
講演内容はというと、キャリアパスに関する話で、主に3つのポイントで話されたということ。
1点目は「“ブリッジビルダー”として職能が異なる人との関係性を良好に保つこと。そして様々な人と繋がることを文化として自分のなかで浸透させること。」
要するに、「自分の範囲や殻に閉じこもって仕事をしていても、しょうがないですよね。」(と理解しました)ということらしい。
まあ、でも日本では当然のように求められる能力だとは思うので、さほど驚きはないですが、むしろアメリカなどは専門性を重要視しそうなので、意外だなーという印象。
2点目は「足元を見ていまある現状をただ良くしようとするのではなく、俯瞰して観察し、未来をつくるように心掛けること。」
これは言葉にするのは簡単ですが、実行するのと、その視点を持てるのが難しいと個人的に思います。僕はこれが大事と気づくのに、働き始めてから5年ぐらいかかりました。
3点目は「常に初心に戻り、すべてが新しいと認識すること。初心に戻ることで、私はこれだけやった、という見栄やゴールを設定することなく、常に前進することができる。」
これも僕はキャリアを積んで気付いたのですが、働き続けるというなかで非常に大事なことだと個人的に思っていることです。同じ仕事をしていても、常に新しい目で見ることは大事だなと常々思います。まあ、これも実行は難しいですけどね。

基調講演について説明するコンセント坂田
上記をまとめた締めの内容は、なんとなく達観し過ぎで浮世離れしていて、「ああ、ヨガの世界」という感じがしましたが、全般的にとても共感できる内容でした。思うに、アメリカでもこのITの世界では、狭い領域での専門性(スペシャリスト)ではなく、ある程度の専門性を持ったジェネラリストが求められているのではないか?と感じた内容でした。
スケールは違いすぎますが、デザイナーからキャリアをスタートしさまざまな経験をしてきた自分にとっては、とても親近感が湧く内容でした。
個人的には「その3つのレッスンの内容、働き始めた最初からわかっていたんですか?今になって気づいたんですか?」というのがすごく気になるのと、「なんで、今、ヨガインストラクターやっているの?」というツッコミを誰もしないみたいなので、僕もスルーします。
IA Summit最終日の最後のセッション「Closing Plenary」は、IAコミュニティではお馴染みのPeter Morville氏によるもの。彼は15年連続でIA Summitに参加しているとのこと。皆勤賞ですね。スゴイ。
Closing Plenaryは若干概念的かつコミュニティを自省するような内容なので、詳しくは省いちゃいます(!)が、印象的だったのは「我々は情報を設計するのは得意だけど、自分自身を設計するのは苦手だよね。」というような内容があったということで、先ほどのキャリアパスの話にもつながっていて興味深いと感じました。
続いて簡単に個別のパラレルセッションの内容紹介。
今年は3本のパラレルセッション+フレックストラックの構成で行われたそうです。
3つのパラレルセッションの内訳は、トラックAが実例などの実践的なHow-toで、トラックBがフレームワークなどの概念的な内容、トラックCが組織やチーム編成的な内容、というラインでの分類。
個人的にはB及びCに興味がありますが、まずはトラックA。
いろいろ紹介の話をききましたが、特に目新しくはなく、「そりゃそうだ、がんばろう」的な感じなので、割愛します。(内容を紹介してくれた方、スイマセン)
その流れでポスターセッションでコンセントが発表してきたものについても紹介。
モバイルUI設計プロトタイプツール「Handmock(ハンモック)」というのがそれ。Handmockはモバイル用のペーパープロトタイピングができるツールで、独特な形状の付箋紙や付属品で構成されているものですが、ポスター発表を見に来た多くの人は、そのツールの一部である3Dプリンターで作成したスマホ筐体モックにも興味をもったようです…。

報告会後にHandmockを囲んで
コンセントのHandmockに関するポスター
コンセントラボ|Handmock(旧名: CHIKUWA)に関する記事
続いてトラックBの話。
個人的に今回のセッションメニューでも興味のあったLOD(Linked Open Data)の話とウェアラブルデバイスの話がこのトラック。
まずは、LODの話。
BBCで行われた音楽情報の配信に関するLOD活用事例的な話。
組織的な取り組みの話なのかなーと思いましたが、結論からいうと、会社で取り組んだというよりも、個人の頑張りで実現しました的な内容で、BBCが積極的にLODに取り組んでいる…とは言えないのかなと思い、少し残念。そして、やっぱりわかりにくいね、LODって感じです。
続いて「Responsive Information Architectures」という内容の話。
タイトルが流行り言葉を意識している風で気になりますが、昨年のIA Summitで提示されたIAモデルを拡張した話のようです。Ontology(オントロジー)から、どのようにQualia(クオリア)が形成されるのかというのは、興味深いですね。
ウェアラブルデバイスの話は、「情報」「デバイス」「人」という3つの関係性とかの話を期待していたのですが、ウェアラブルデバイスを扱う上でのデザインルールの話でした。主に4つのルールが提示されたようです。
- 「Intent (ちゃんと計画しよう)」
- 「Immersion (熱中できるようにしよう)」
- 「Immediacy(即時性が必要です)」
- 「Intimacy(親しみやすさ)」
最後にトラックCの話。
教育の話、クライアントとの付き合い方の話などプロジェクト実行時にリアルにぶつかる壁の乗り越え方や注意点の話でしたが、日本という文化を加味すると「どうなのか」という内容も多い印象。
その中で徒弟制度の話が興味深かったので軽く触れます。
「UXデザイナー不足を解消するための実際的なApprenticeship(徒弟制度)の紹介」ということで、徒弟制度のアーキテクチャに触れています。「1人あたり13人のメンターをつけ、12週間で25のメソッドを教え、252時間のフェイス・トゥ・フェイスのメンターシップを実施」などちゃんと数値化しているのがいいですね。「Apprenticeship」ということで、「Internship」との違いや「Mentorship」との関係性などから、徒弟制度の重要性を説明する内容。
徒弟制度そのものは、日本にも文化があったはずなのに、最近の日本企業では失われつつあるものを、海外では数値化して見なおしているところがとても興味深いです。
個人的にも昨今のWebの業界で、経験不足のデザイナーやIA、PMが多いのは、この徒弟制度的なものが失われつつあるからなのでは?と思っています。
そんなこんなで、お酒もいい感じですすんで酔いがまわってきたのもあり、最後の方はよく覚えていないので、詳しく知りたい方は基調講演を含め、ほぼすべてのスライドがMedium上で公開されていますので、そちらをご覧いただければと思います。
最後に、来年のIASummit 2015は、アメリカのミネアポリスで2015年4月22日〜26日に開催されるそうです。コンセントからも例年通り参加する予定ですが、開催日がいつもと違って日本の期末ではないので、日本からも行きやすいですね!!これは地味に嬉しい。
参加を考えている方は下記の最新情報をチェックしてください。
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