ユーザーの気持ちに寄り添うPoC 共感×実感のプロトタイプによるコンセプト検証
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最近、サービス開発プロジェクトの相談をいただく際に、お客さまから「PoC(Proof of Conceptの略で、概念実証・コンセプト検証の意)」について依頼いただく機会が増えました。
コンセントでは、十数年ほど前からPoCを盛り込んだプロジェクトプランを提案していました。事業のリスクコントロールのためには、コンセプトの市場性を検証する工程が不可欠だと考えていたからです。
十数年前の状況から今を見ると、プロトタイプをつくり検証した上でサービス開発するという工程が、急速に当たり前になってきた印象を受けます。
コンセプト検証において、「ユーザー(被験者)の反応の引き出し方」には注意が必要です。ユーザーは話し手のプロではありません。素直な言葉を引き出すためには「被験者の気持ちに寄り添ったプロトタイプ」が重要です。今回は、コンセントがサービスコンセプト検証方法で取り入れている方法をご紹介します。
検証は「共感 × 実感」の二段構えで
コンセントでは「サービスコンセプトに共感が生まれるかどうかのプロトタイプ」と「サービス価値が実感されるかどうかのプロトタイプ」の2種類の掛け合わせで、サービスコンセプト検証に臨みます。

共感のプロトタイプ
文字だけでサービスコンセプトや価値を伝えられても、ユーザーは正確にサービスイメージを思い描くことはできません。言葉の捉え方の違いで、違う完成系を思い描くかもしれません。「(なんとなく)良いかも」と言ってしまうかもしれません。
サービスコンセプトの検証には、サービスで提供したい価値をユーザーが理解できる解像度で具体化・編集し、届けることが重要です。ユーザーに、正確にコンセプトを理解した上でフィードバックしてもらう。その役割を担うのが「共感」のプロトタイプです。
コンセプトインプレッションシート(CIS)
サービスのコンセプト・価値・価格・プロダクトイメージなどの情報をまとめた仮想のサービスパンフレット。ユーザーがサービスを具体的にイメージするために効果的です。
サービスコンセプトムービー
サービスのイメージを伝えるコンセプトムービー。新しい生活様式の提案など、近未来の話であったり、抽象度が高いものであったりなど、ユーザーが想像しにくいサービスの検証には特に効果的です。
実感のプロトタイプ
ユーザーがサービスコンセプトを正確に理解し、共感すると言った場合でも、自分のふだんの生活で利用するイメージが具体的に湧いていないこともあります。「あったら使うかも」という言葉を「使いたい」に具体化するのが、「実感」のプロトタイプです。
実際のプロダクトを想起させるプロトタイプを操作して、ふだんの生活でサービスを利用している自分をイメージしてもらうことで、ユーザーの声がより「本物」に近づきます。
デジタルプロトタイプ
デザインツール上で、コードを記述しないでつくれるプロトタイプ。画面遷移をつないだ簡易的なものから、キーボード入力/アニメーション演出などのインタラクティブな要素をつくり込んだものまで、プロジェクトの目的に応じた忠実度で作成します。
HTML・ネイティブプロトタイプ
コードを記述して開発する高忠実度のプロトタイプ。入力や検索ができるなど操作の自由度が高く、最終的なプロダクトのイメージに近いつくり込みができます。
検証目的に合わせた、適切なプロトタイプの選択を
PoCにおいてどのようなプロトタイプを選ぶかは、検証の目的/期間/コストに合わせて最適なものを選択する必要があります。プロトタイプはユーザーが共感し、サービス価値を実感できるものであることが重要です。高忠実度のプロトタイプであればユーザーの共感と実感を生み出す、とは限りません。
共感×実感の掛け合わせによる検証
第一生命保険株式会社様の少額短期保険「Snap Insurance」事業開発支援では、CIS×デジタルプロトタイプによる検証を実施しました。

CISとデジタルプロトタイプ
若者層に対する少額短期保険のニーズを検証することが主目的だったため、サービス理解を促すためにCISを作成し、申し込み開始から完了までのシナリオをウォークスルーできる簡易的なデジタルプロトタイプをつくりました。コンシューマー向けのサービスはコンセプトへの共感検証に比重をかけることが多く、実感のプロトタイプは素早く検証するために簡易につくることがよくあります。
参考:共感×実感の掛け合わせによる検証事例「少額短期保険『Snap Insurance』事業開発支援」
一方、BtoBの業務支援サービスではコンセプトはもちろんですが、実際に業務が効率化するか、従業員のオペレーションにマッチするかの検証が重要です。その場合、操作の自由度が低いデジタルプロトタイプでは検証として不十分だといえるでしょう。検証の目的を整理すれば、予算や期間と照らし合わせて最適な「組み合わせ」が見つかります。思っていたよりも、素早くライトに新規サービスの検証ができるかもしれません。
重要なのは、何が一番ユーザー(被験者)の共感を生み、実感を促すプロトタイプかを想像すること。いま一度、ユーザーの気持ちに寄り添った検証ができているか、振り返ってみませんか?
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