ウェブサイトの品質を長期的に維持する! リニューアルで押さえたい4つのポイント

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    佐藤いづみプロジェクトマネージャー/ウェブディレクター

メインビジュアル。リニューアルの4つのポイントを組み立てている人物たちのイメージ

自社のウェブサイトを運営していると、掲載している情報が徐々に古くなったり、いつの間にかルールが守られなくなったりと、経年劣化といえる問題を感じることがあると思います。

私の経験からも、運営に関わるステークホルダーが多いほど問題の根は深くなりがち。「担当部署ごとにページのデザインが全然違っていて統一感がない」「古い情報をどのように更新していけばよいのかわからない」。そんな状況をクライアントから聞く機会も多いです。背景には、組織改編や担当者変更によって、サイト運営に関する経緯やナレッジなどの情報が徐々に曖昧になり、いつの間にか誰も何もわからない状態に……ということがあるようです。

ウェブサイトのリニューアルは、デザインや技術のトレンドサイクルに対応する目的で行われることが多いですが、こうした運営上の課題の解消に取り組む絶好の機会にもなります。

この記事ではコーポレートサイトのリニューアルプロジェクトを例に、信頼性のある公式情報を発信し続けるプラットフォームとして、自社ウェブサイトの品質をなるべく長く維持するために押さえるべきポイントをご紹介します。

1. ウェブサイトの役割とコンセプトを言語化する

社内の関係者のさまざまな要望に都度応えながらウェブサイトの更新を重ねた結果、見た目や情報がごちゃごちゃしてしまっている……。

これはウェブサイトの役割やコンセプトがはっきりしない、またそれを理解して運営をコントロールする担当者が不在といった場合に陥る状態です。

自分が担当しているウェブサイトは、誰に向けてどのようなコミュニケーションするものかを説明できますか? 例えば、求職者が転職サイトから企業情報を調べにきたときに「先進的で面白そうな会社だと印象付け、エントリーへと導く」とか、生活者が自社製品の購入を検討する際に「『便利そう』『素敵だな』と印象付け、店頭での購入を促す」といったふうに。

1つのウェブサイトにもさまざまな役割を期待できますが、その中で最優先するものを決めましょう。ウェブサイトの役割とコンセプトを明確化することを軸にすると、コンテンツの方向性はどうあるべきか、情報の更新頻度や取り下げのタイミングはどうするかなど、ウェブサイトの屋台骨となる運営方針を立てていくことができます。

誰に向けてコミュニケーションするものかを明確にし、運営方針を立てる様子を表した図。評価機関や投資家を重視するなら「情報を簡潔・端的に表現し情報が探しやすいサイトに」、求職者や消費者を重視するなら「企業の魅力・信頼性を情緒的にもアピールするサイトに」するという例を記載している。

2. 業務フローや運用ルールを定める

ウェブサイトの運営方針を立てたら、次は誰がどう運営に関わるのか、オペレーションのルールや仕組みを整理しましょう。

まずは直近1年の更新作業の対象、内容、頻度、起案から公開までのリードタイム、担当者などを洗い出し、更新の要件やフローを整理します。

例えば商品情報の更新であれば、

  • テキストでスペック情報を作成し、商品画像3点とイメージ画像1点を掲載する
  • 年間を通して不定期で更新が発生
  • 発売1カ月前に営業部門からテキストと写真が届き、制作会社が中4日でページを作成。営業部門と開発部門が中2日でチェックして、広報部長が承認したら翌々日10時に制作会社が公開する

といった内容をフロー図にして棚卸しします。課題点があれば改善し、運用ルールに反映しましょう。

ウェブサイトの運営フロー図。記事更新の担当部門が原稿を用意して協力会社に渡すところから始まり、本番化されたものを確認するところまでの流れを記載している。

フロー図のイメージ。現状の運用を可視化することで課題が見つけやすくなる。

このような作業は一見面倒です。ですが、CMSの導入やリプレイスもスコープに含むようなリニューアルなら、スムーズな運営を実現するCMSの機能設計に大いに還元できます。また、オペレーションを定型化することで、コミュニケーションロスや事故発生を防ぎ、運営コストの低減にもつながります。

セキュリティやSEO、アクセシビリティなどの要件を徹底する場合は、それを実現するためのルールも定めましょう。デザインに関しても、フォントやデザインパーツの使い方といった基本ルールを明文化しておくと、デザインがバラバラでごちゃごちゃするといった問題の回避につながりますし、ページ制作の効率化にも寄与します。

3. 運営体制を明確にする

方針やルールができたとしても、ウェブサイト運営のステークホルダーが多いと、結局それぞれの目的を優先して別な方向に走り出してしまうことも。そのため、ウェブサイトを誰がどう管理するかについても決めましょう。

ウェブサイトに情報を掲載している各部署がいつ、どのような情報更新を行っているのか、運営に関わる全員が把握しているケースは案外少ないと思います。

しかし、特定の誰かがウェブサイト全体の主要な動きを理解し、連携のパイプ役や調整役を担うことのない状態で品質を維持することは困難です。1人で担当するのが難しい場合でも、関連部署から1名以上が参加する月例会などを設け、主要な更新予定の把握やアクセスログの確認、そのほかサイト運営上の課題の検討といった連携ができると、サイトの運営体制としては理想的です。

ウェブサイト運営の体制図の例。ウェブマスターを中心とした社内体制と、コンテンツ制作やシステム開発・保守などを担当する協力会社との関係性を記載している。

「ウェブマスターを中心に事業部、インフラ管理チームは随時連携する」「コンテンツ更新の内容はウェブマスターが把握し、更新作業は運営専任の協力会社が行う」「コンテンツ制作は事業部の責任において、外部の協力会社と行う」運営体制の例。体制図で把握することはガバナンスを効かせるためにも重要。

運営体制づくりや会議体の設計・推進には、日頃から更新作業を担当し、予定や実態を把握しているパートナー企業に協力依頼することも手段の一つです。

また、新しい運営体制はリニューアルが完了した後から始動することが多いですが、新体制の見通しをある程度立ててから、前段の「2.業務フローや運用ルールを定める」で述べた検討の実施をおすすめします。そうすることで、実際の運営体制に即した、実現可能性の高いフロー・ルールが作成できるからです。

4. 後任者に引き継ぎやすい形で文書化する

長期的な品質維持のために肝心なのは、ウェブサイト運営の担当者が代わったときも定めたルールが保たれることです。運営に関する情報が属人化せず、適切に引き継がれるように、ウェブサイトの役割・コンセプト・ルールをガイドラインやマニュアルといった形で文書化しましょう。

これらの情報はプロジェクトの検討過程で断片的なドキュメントとして残ることが多いので、それをアレンジするだけでも十分です。ただし、内容が複雑だったり情報量が多すぎたりすると、結局引き継がれずに形骸化することも多いため、私は必要なものだけを残してなるべく内容を削ぎ落とし、シンプルにすることを心掛けています。

サイト運営のガイドラインの例。左側は、ルールの範囲を簡潔にまとめたおすすめの例。右側は、ルールを厳密に説明したために情報量が増えてしまってわかりにくい例。

文書化したガイドラインの例。情報は的確・端的・最低限にするのがポイント。目次の長さに読む気をなくした経験はないでしょうか。

運営チームへの継続的なルール浸透のためには、サイト化したり、定期的に説明会を実施したりするなどの工夫も有効です。

「リニューアル」を最大限に活用しよう

実のところ、本記事の[1]~[3]の内容に関しては、ウェブサイト制作のプロセスとして必ず行われていることです。このプロセスを丁寧に行うことが、ウェブサイトそのものの品質向上や関連業務の効率化にダイレクトにつながるため、そこに注力しないのは率直にもったいないと考えています。

ウェブサイトリニューアルは、社外の専門家と共にサイトの在り方・運営方法を根本から見直す絶好の機会です。いざリニューアルするとなった際には、プロジェクトの目的の一つに「理想的な運営状態を実現し、長期的にウェブサイトの品質を保つこと」を据えて、じっくり課題抽出と検討に取り組んでいただくことをおすすめします。

[ 執筆者 ]

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