特定非営利活動法人人間中心設計推進機構(以下、HCD-Net)の「HCD-Net AWARD 2020」にて、コンセントの
(通称:パブ・ラボ)が行った、HCDプロセスによる行政サービス改善と組織導入支援を行ったライブトレーニングプロジェクト「KOBE Smart Welfare Service」が、優秀賞を受賞しました。
「HCD-Net AWARD」は企業におけるHCD/UXD活動を表彰するもので、2020年はこれまでの「やったこと、成果を賞する」から、「共有価値の高いナレッジ・ノウハウを賞する」へと賞コンセプトが変更となりました。応募時の申請内容そのものが共有価値の高いナレッジ・ノウハウとなることが目指され、審査では「新規性/ユニークさ」「オリジナリティ」「利用価値・共有価値の大きさ」「成果事例の内容」「プレゼンテーション」の5つの観点で評価されます。
今回、PUBLIC DESIGN LAB.が受賞したのは、「所属組織内外に限らず、HCDに関連した教育・育成アクティビティ」と「高い教育効果を生んだノウハウ・ナレッジの価値」としての取り組みが評価される教育・育成ジャンルです。
ライブトレーニングプロジェクト「KOBE Smart Welfare Service」は、神戸市の生活保護業務における、ユーザー視点を含む包括的な視点での課題定義と、その解決策の策定を目指したサービスデザイン支援プロジェクトです。大きな特徴の一つとして、サービスデザイナーが伴走して知識移転を行いながら実際の課題解決にあたる「ライブトレーニング」としてプロジェクトを位置付けたことがあります。
コンセントでは、サービスデザイン思考を用いて来るべき未来社会における公共ネットワークの在るべき姿を探究するため、サービスデザイナーの小橋真哉と小山田那由他が2014年にPUBLIC DESIGN LAB.をスタートさせ取り組んでまいりました。2018年には一般社団法人 行政情報システム研究所による「行政におけるサービスデザイン推進に関する調査研究」に協力し、その報告書の中で、行政でのサービスデザイン推進のための能力育成においては、行政職員が実際のプロジェクトを通し、経験を積んだ専門家と共創しながらさまざまな取り組みを行い実践的に身につけていくことが必要であることを提言していました。
今回、優秀賞を受賞したライブトレーニングプロジェクト「KOBE Smart Welfare Service」は、まさにその提言を実践した形となります。神戸市の生活保護サービスが抱える課題を解決しながらも、同時に行政職員がサービスデザインのプロセスを理解してユーザーの課題を把握し、解決策を策定できるようになることを目指してプロジェクトプランを設計。実施にあたっては、コンセントで独自開発した「こんな人いるなぁ」ワークをはじめとしたワークショッププログラムやツールキットを活用し、デザイナーが伴走しながら、デザインアプローチを実践的に習得していただけるようにしました。

写真左/ワークショップの様子(2019年7月開催) 写真右/ツールキットの一つ、インタビューガイド
その結果、ユーザー視点での横断的な課題の洗い出し、申請業務のデジタル化のソリューション企画といった「行政サービス改善」、包括的な検討やリフレーミングを行うための新しい視点の獲得をはじめとした行政職員の長期的な「教育・育成面」の両面において一定の成果が得られました。
行政サービスでは実施前には具体的などのような発見が得られるかがわからないため、探求的なアプローチであるデザイン思考を実践するには構造的な難しさがありますが、今回の神戸市との取り組みでは「ライブトレーニング」というコンセプトを取り入れることでこのハードルを乗り越えています。

HCD-Net AWARD 2020の表彰式は11月27日に「HCD-Netフォーラム2020」内で行われ、優秀賞3つのうちの1つに選ばれたコンセントのライブトレーニングプロジェクト「KOBE Smart Welfare Service」は、「公共サービスではHCDを適用できている実例がまだほとんどない中、現場でどのように導入するかについて取り組み、新しい領域にHCDを広めたお手本となるもの」として評価をいただきました。
本プロジェクトの詳細を事例紹介ページに掲載しています。合わせてぜひご一読ください。
《「HCD-Net AWARD 2020」受賞内容》
- プロジェクト名称:HCDプロセスによる行政サービス改善と組織導入支援
ライブトレーニングプロジェクト「KOBE Smart Welfare Service」 - 受賞名:教育・育成ジャンル 優秀賞
- 受賞者:株式会社コンセント 小橋真哉、小山田那由他、石井真奈、齊藤美咲
- HCD-Net AWARD 2020 サイト:
2020年12月15日追記:HCD-Netサイトに受賞作品が掲載されました。最終審査会でのプレゼンテーション資料が公開されています。