パナソニック   家庭内電力に関する顧客価値探索エスノグラフィ調査

生活の中の潜在ニーズを
観察調査から具体化する

家庭で使う電力を管理・節約するための「HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)」。その導入検討プロセスや利用実態に関する調査の実施と、ソリューション検討を行いました。実際にHEMSを導入している家庭や、当時導入を検討していた家庭に訪問し、インサイトを得るための「エスノグラフィ調査」を実施することで、このシステムが各ユーザーの生活により役立つものになるためには、どのような改善点があるかを洗い出しました。

  • ドキュメント・スライド
  • 事業開発支援

[ プロジェクトのポイント ]

  • ユーザーの潜在ニーズを発見する観察調査
  • 調査から得られたインサイトを施策に具体化する分析手法

プロジェクトの背景

HEMSを導入しているユーザーは、調査当時、国の後押しや企業の営業努力もあり一定数存在していました。しかし、必ずしも電気の使い方に関心がある人たちばかりではなく、むしろ住宅を新築した時に工務店から薦められてなんとなく設置したというタイプのユーザーの方が多数派だったかもしれません。このような「なんとなく設置したユーザー」はHEMS機器をあまり使っていないことも多く、ユーザーの生活文脈におけるHEMSの期待価値や利用価値が不透明な状態にありました。

問題解決までのアプローチ

まず、多くのユーザーが生活の中で「HEMS」の導入や電気代に特別な意識を抱いているわけではなく、その価値はまだ潜在的なものとしてあまり意識されていないのではないか、と仮定しました。この場合、HEMSに対する顕在ニーズを見出すアンケートや構造化された(設問や流れが決まった)インタビュー調査よりも、潜在ニーズを発見するための半構造化(設問や流れを大まかにのみ決める)インタビューを交えた観察調査が有効です。


 

また、企業視点ではなく生活者の日常生活実態に沿ったニーズを洗い出す必要があったため、調査はHEMS機器の利用実態に限らず、家庭における電力管理全体に関わる考え方や価値観までスコープを広げました。家族関係・家計管理・地域との関わり・生活行動などの、ユーザーを取り巻く「文化」を現地でつぶさに観察し、関連する価値観を抽出しました。


 

調査は、関東各地で、「子供のいる核家族」「DINKS」「三世代同居」それぞれの戸建て世帯を5世帯ずつ、合計15世帯実施しました。導入前の期待価値と、実際の利用価値の乖離に問題があるからとの仮説があったため、調査は実際のHEMS機器利用の観察はもちろん、導入から現状までの文脈に関するインタビューも行いました。また、調査対象者のリクルーティングにあたって、一般生活者のほとんどがまだ意識していないような価値を見出している「エクストリームユーザー」への調査も必要と考えました。そこで、ユーザーの中で多かった家の建て替えや引っ越しなどのライフイベント時にHEMSを導入したユーザーと、逆にそれと関係なくHEMS購入を検討しているユーザーを一定数織り交ぜ、その他いくつかの細かいスクリーニング項目を設定してリクルーティングしました。後者がエクストリームユーザーとなります。


 

調査の結果、当初想定より厳しいHEMSの状況がわかりました。導入にあたっては他にいろいろと考えることがある時に「補助金」がつくので入れてもあまりコストがかからない、という理由で、明確に「期待価値」が醸成されず導入が決定され、また、利用にあたっては電気代が可視化されるものの、体験としてはそこから何を見出せばいいのかわからない、という状況でした。特に残念なケースにはパスワードを忘れて、しかし再ログインする気にもなれず電源を抜いて放置される、ということもありました。近年広がりを見せているIoTやスマートホームのような機能が実装されることを期待しているユーザーもいましたが、当時はその期待にすぐに応えられる状況ではありませんでした。

このようなインタビューで得た情報は仮説ユーザー像を描くターゲットペルソナや生活環境を記述するワークモデル等の手法で整理分析を行い、最終的に価値抽出手法のKA法(※1)を用い作成した「価値マップ」として構造化し、ユーザーの顕在/潜在的な利用価値、期待価値を整理しました。そこから、いまだ訴求できていないユーザー価値の早期の実現に期待できる主要なソリューション仮説のプレゼンシートを3つ、それ以外にも価値創出につながる可能性として考えられるアイデアスケッチを作成しました。具体的にその中で1つはソリューションとして開発され、他の数案もプロトタイピング検討まで進みました。


  1. ※1KA法とは、株式会社紀文食品のチーフ・マーケティング・アドバイザーである浅田和実氏が開発した、価値ベースでユーザーの行動を分析する手法です。

プロジェクトの体制

  • サービスデザイナー:3名

[ プロジェクト概要 ]

クライアント名 パナソニック株式会社 様
実施日 2014.2〜3月
  • Facebookでシェアする
  • Xでシェアする

お仕事のご相談やお見積もり、ご不明な点など、お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ
ページの先頭に戻る